血管交換シヨ?
ツキくんの第一印象は
″すごく色白の男の子″だった。

華奢で、首や腕の筋が妙に色っぽい。

密度の濃いまつ毛。
瞬きするたびに下瞼に影ができて
真っ黒の瞳を隠す。

二年生になるまで、
スズはツキくんの存在を知らなかった。

廊下ですれ違ったことくらいならあると思うけれど
一学年に十クラスもあるから
たまにすれ違う程度では、そうそう憶えていられない。

それでも通り過ぎていった一年間を
スズは物凄く後悔した。

こんなにきれいな人に気づかずに生きてきたなんて。

取り戻せない一年間を取り戻すことができるのなら
ツキくんとの出逢いに全ベットするのに。

「つきみくん、っていうんですか?」

「そうそう。秋の、お月見の月見。かわいーでしょ」

答えてくれたのはお友達のほうだった。
ツキくんは″可愛い″って言われてムスッとしているみたいだった。

「うん。可愛いですね」

ナチュラルにそう答えてしまったスズに
ツキくんは明からさまに眉間に皺を作った。

しまった、って思ったけれど
本心だからしょうがない。

「えぇーっと…ごめんなさい。でも素敵な名前で羨ましい。本当に」

「なぁー?いいよなぁ、印象に残りやすいし。きみは?教えてよ、名前」

「スっ…私は…変だから…名前…」

「どうせすぐバレんじゃん。ムリだよ、同じクラスで隠し通すのは」

ツキくんは机に頬杖をつきながら言った。
口元に手のひらがあるから
ちょっとくぐもった声色だった。
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