血管交換シヨ?
オープン当初よりは開放的になっているって聞いてはいたけれど、
それは大型休暇も無い平日の話で、
夏休みともなるとやっぱり、特にファミリー層で水族館は賑わっていた。

入場の当日券を購入する為に
スズ達は列に並んだ。

夢の国の入園みたいに果てしなく並んでいるわけじゃないけれど
列ができているのは想定外だった。

「ごめんね。リサーチ不足で」

「えー?こんなの全然平気だよね?」

謝るスズに一番に応えてくれたのは
美桜ちゃんだった。

「美桜ちゃん、待つの平気?」

「こんなの待つうちに全然入んないし。鈴芽ちゃん、もしかして苦手なの?」

「スズはそんなことないけど。暑いし、みんな平気かなって」

「暑い寒いで待てないならさ、ちょー人気のおいしーい物とか、最高にたっのしーいアトラクションとかもぜーんぶ諦めなきゃいけなくなっちゃうじゃん。そんなの絶対にムリ。人生つまんなすぎ」

「確かに。美桜ちゃん、いいこと言うねぇ」

「中原とは待たないから安心していいよぉ?」

「えー、今こうやって待ってんのに?」

「ついででしょ、ついで」

「美桜は中原に厳しいな」

言い合っていたら
入場券購入の順番はあっという間に回ってきた。

美桜ちゃんの言う通り。
こんなのは全然待っているうちに入らなかったし
実際、美桜ちゃんが言ってくれたことにスズは救われた。

美桜ちゃんのこういうところを
ツキくんは好きなんだろうなって、思ってしまった。
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