血管交換シヨ?
海月(くらげ)が見たい」って美桜ちゃんの一言で
パンフレットの館内の案内図を無視して
一直線に海月の展示スペースへと進んだ。

海月の展示スペースは、
一言で言えば(あお)かった。

錯覚かもしれないけれど
どの展示スペースよりも藍くて
キラキラと光を受けていて
海月の半透明の白さが一際目立っていた。

屈伸運動をするみたいに触手を動かして
ぷかぷかと水中を揺蕩う海月。
不思議と無心で観ていられる。

「優雅だよなぁ」

「ツキくん?」

不意に声がしたと思ったら
スズのすぐ隣でツキくんがジッとアクアリウムを見つめている。

海月。

月見。

おんなじ月だって思ったけれど
ツキくんの月は間違いなく空に浮かぶ月だから
おんなじじゃない。

空と海の月。

「ねぇ、ツキくん」

「ん?」

「海月ってなんで海の月って書くのかな」

「海月って透けてるじゃん」

「透けてるね」

「朝とか、昼間に見える月ってぽわーっとしてて白くてさ。俺的には夜よりも明るいうちの月のほうがそう見えるんだけどさ。海に浮かぶ姿がそういう、反射する月に似てるから、とかだったと思う」

「へぇー。じゃあ空の月とまったく無関係ってわけでもないんだね」

「それは分かんないけど。俺とは関係ないからね?」

また、見透かされたって思った。
スズがツキくんに思ってること、全部見透かしちゃうんだから。

ツキくんって本当はエスパーなのかもしれない。
気づいててスズを手のひらの上で転がしてる。
ずるいエスパーだ。
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