血管交換シヨ?
イルカショーは終始、子ども達の歓声に包まれていた。

演出としてイルカの尾が水面を弾くと、
大きな水飛沫がプールから噴き上がって
観覧席の前方に座るお客さん達を濡らした。

子ども達は大はしゃぎだし、
アトラクションみたいで大人達もどこか嬉しそうだった。

「わー。楽しそうだけど後ろでよかったー」

美桜ちゃんの言葉にスズも同意。
夏だし、気持ちよさそうだけど
デート(デートなのかな?)で濡れてしまうのはさすがに避けたい。

チラッてツキくんを盗み見したら
思っていたよりもニコニコとイルカを目で追っている。

「可愛いね」

「ん。賢いな」

「ほんとほんと。スズより賢いかも」

「かもなー?」

「えー、ひどい」

あー。幸せ。
こんな些細な会話ですら、ツキくんはスズを世界一幸せな気持ちにしてくれる。

中原くんと美桜ちゃんも何か楽しそうにお喋りしている。
このまま美桜ちゃんの目を盗んで
ツキくんの手を引いて、ここから抜け出せたらいいのに。

中原くんだってきっとそれを望んでいるだろう。
だってスズ達は共犯者なんだから。

だけど二人とも、臆病でポンコツな共犯者。

そんな罪を犯す勇気なんて
持っていなかった。
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