血管交換シヨ?
「お腹空いたぁ」

イルカショーが終わって、
ゾロゾロと館内に戻っていく人達の背中を
スズ達四人は見送った。

慌てて行動しても
範囲が定められている通路はどうせごった返すし
まるで引率されているみたいなきれいな列も
足止めを食らってなかなか前には進めそうになかった。

のんびり構えているスズ、ツキくん、中原くん。
そんな三人に訴えかけるように美桜ちゃんが言った。

左手首に巻いた腕時計に視線を移す。
短針は一時を指している。

集合時間は十一時だった。
そのまま水族館まで来て、流れるように海月を観ていたから
スズ達はまだランチをしていない。

確かにお腹が空いていて
美桜ちゃんに言われた瞬間にギュルッて胃が動いた気がした。

スズは内臓もちゃんと、単純らしい。

「うん。スズもお腹空いた」

「俺も。なんか食べ行こうぜー。つきみちゃんはなんか食いたいもんある?」

「美桜達が選びなよ」

「じゃあ俺はぁー」

「お前じゃない。女の子達に言ってんのー」

「冗談じゃんかぁ」

「もう黙ってな」

美桜ちゃんに拳でおでこをコツンってされた中原くんは
今日イチ嬉しそうに目を輝かせた。

中原くんもちゃんと、単純らしい。
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