血管交換シヨ?

拒絶反応に抗う、なんてまるで神話

スズが座り直してからも
数秒、ツキくんはスズの手首を握ったまま
スズの顔をジッと見ていた。

そのうち、諦めたみたいに
短く息を吐き出して何かを言おうとしているのか
うすく、くちびるを開いた。

スズの手首からスーッと離れていく、
ツキくんの手のひら。

ほんの数秒間のはずなのにスローモーションを見ているみたいに
ツキくんの動きひとつひとつがひどくゆっくりに見えて、
すごく長い時間に感じた。

「いつまで続けんの」

ほとんどのお客さんは館内に戻っていて
時々イルカが跳ねて鳴る水音に紛れるみたいに
ツキくんはそっと言葉を吐き出した。

「いつまで……え?」

「中原と何を企んでるの」

「企んでるって…なにが?」

不意にスズの目元に触れたツキくんの指先に
ビクッと肩が跳ねる。

ツキくんは表情も変えずに
「目、泳いでる」って言った。

もう全部、お見通しなんだろう。
スズの些細な感情すら
簡単に見抜いてしまうようなツキくんだ。

普段あんまり喋ったこともない中原くんと、
美桜ちゃんも一緒に遊びに行こうなんて誘ったら
そんなの怪しいに決まってる。

元々はツキくんと二人で遊ぼうって約束してたのに。
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