血管交換シヨ?
ツキくんがスズの腕を引いて、
思考が追いつかないまま強制的に立ち上がらされたスズを連れて、
館内に戻ったと思ったらそのまま退館した。

ツキくんはスマホを耳に当てて
電話に出た人に向かって話した。

「あのさぁ、スズがもしかしたら熱中症かも。体調悪いんだって。近くまで送ってくから。うん…うん、ごめん。中原とゆっくりしてって。うん…あぁ、そんなに重症ではないよ。歩けてるし。うん、ありがと。ごめんな」

電話を切ったツキくんは「美桜」って言いながらスマホを振って、にっこり笑った。

「いいの?」

「お大事にだって」

「いや…」

「これで俺も共犯者だな」

ずるい。

なんでツキくんまで一緒に最低になるの。
ツキくんになんのメリットがあるの。

美桜ちゃんに怒られちゃうかもしれないのに。
本当に中原くんに奪われちゃうかもしれないのに。

スズを嬉しくさせたって
スズが嬉しいだけで、
ここには一切、利害の一致はないかもしれないのに。
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