血管交換シヨ?
「本、いっぱいあるね」

「気になる?」

「うん。シンプルに凄いなぁって。本のお城みたい。どれが一番好きなの?」

「一番好きっていうか、感情的にも影響を受けてるのはやっぱこの前あげた小説だけど。この人なんかも好き。この小説の中にはすごく俺が生きてるなぁって感じるし」

立ち上がったツキくんが手を伸ばした小説の表紙を見た。
作家さんの名前もタイトルも
初めて知るものだった。

「面白いの?」

「面白い小説っていうか、これ自体は違うんだけど。自分の中では私小説みたいな(くく)りかな。未来の俺の」

「未来のツキくん?」

「こんな大人になったらヤバいだろーなって」

いたずらっ子みたいな顔をしてツキくんは笑った。
つられてスズも笑う。

もしも大人になった時に隣にはまだツキくんが居てくれて
その時にこの小説を憶えていたら読んでみようって思った。

もうすぐ十六歳になるスズと
未来のスズとの答え合わせ。

ツキくんから受け取った小説を本棚に戻しているスズの後ろで
ツキくんがシーリングライトを点けた。

突然視界が明るくなって
ちょっと驚いてしまった。
< 59 / 92 >

この作品をシェア

pagetop