血管交換シヨ?
涼しい顔でゴクゴクとジャスミンティーを飲むツキくんが
なんだかもはや憎い。

なんでそんなことを平気で言えるんだろう。
スズの心臓が爆発して死ねばいいって思ってるのかな。

ツキくんの言動は罪だってこと
分かっててやってるんなら相当悪いけど
意味もなくやってるのならそれこそ極刑物だよ…。

なのに。

ツキくんは酷かった。

スズの想像なんてメーターを振り切って、
ツキくんは酷い人だった。

喉がカラカラで
手を伸ばしたグラスは空っぽだった。

その動作を認識していたツキくんは
黙ったままスズのグラスにジャスミンティーを注いでくれた。

一瞬、動きが遅れたスズを嘲笑うかのように
そのグラスを持ち上げて、ツキくんは口をつけた。

シーリングライトも消灯させないまま。

白く明るいままの部屋で
スズの耳を両手で塞ぐみたいにして

口付けた。

ジャスミンティーが口内に流れ込んでくる。

塞がれた鼓膜の奥では
深海に潜ったみたいな音。

自分が鳴らしたゴクッて音。

人の口内に一度触れているのに
自分で飲むよりも、移されたジャスミンティーは不思議と冷たかった。
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