血管交換シヨ?
「ツキくんって何型?」

分かってる。
こんな雰囲気の時に訊くようなことじゃない。

「血液型?Bだけど」

「スズはね、A型なんだ」

「そーなんだ」

「ツキくんとスズは輸血し合えないね」

「あはは。そうだなぁ」

「じゃあさ、ツキくん」

「んー?」

「血管交換しよ?」

ツキくんの口角がゆっくりと弧を描く。
きれいな三日月みたいに微笑んで、
「文豪の激愛小説みたいでいいね」って言った。

血液すら溶け合うことができないのなら。
血管ごと交換してしまえば、
いつかスズの細胞はツキくんになれる。

そんなありえないことすら
バカみたいに信じていたかった。

そんなくだらないことに「いいね」って笑えるツキくんが
愛しくてたまらない。

拒絶反応を起こして死んでしまっても
それがツキくんとならいっこうに構わない。

死因は愛。

この世界でそんなことがまかり通るのなら
スズとツキくんは唯一無二になれるのに。
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