血管交換シヨ?
牽制だと思った。

今日、ツキくんを迎えに来たのだって
スズのことを探る為だったのかもしれない。

ツキくんが普段どんな風にスズのことを話しているのかは分からない。
でも彼女の心にちょっとでも影響を与えているのは確かなんだと思う。

それでもスズは彼女に対して「ざまーみろ」なんて思えなかった。
ショックだった。
ツキくんが既に誰かのものだったこと。
スズにはツキくんを独占する権利なんて無かったこと。

ツキくんが本当にスズのことを″いい子″だって言ってくれているのなら
スズにはそれを裏切ることはできない。

「なーにやってんの」

向かい合うスズ達の間に割って入るようにして
ツキくんが来た。

ドアと壁の間。
狭い距離に三人並んだら
必然的にスズとツキくんの距離も近くなる。

そのツキくんの腕をするりと抱きかかえるようにして
美少女が微笑んだ。

「迎えに来たんじゃん。遅いよ」

「ごめん。あー、この子は、みお」

「みお、ちゃん」

「そう。ほら」

ツキくんが美少女の名札を指差した。

「桜田、だろ。で、名前が美しい桜で、桜田美桜(さくらだみお)。名前に桜が二つも入ってる」

「やめてよ。ギャグみたいで気に入ってないんだから」

「なんで?いーじゃん。風情があって」

「風情って!」

ツキくんを見上げながら頬を膨らませる美桜ちゃんは
とびきり可愛い。

美桜ちゃんに笑いかけるツキくんの目。

そんな目、
知らなかった。
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