血管交換シヨ?
アラームを止めたのは無意識だったみたいで、
ツキくんは何事も無かったかのように静かに瞼を閉じてしまった。

冷房をつけっぱなしで寝ていたから体が冷えてしまったのか、
ちょっと寒そうにブランケットを手繰り寄せてもぞもぞしている。

「んー…」って、寝起きの駄々っ子みたいな声を漏らしていて可愛い。

スローモーションみたいにゆっくりと瞼を開いて、
ブランケットから少しだけ飛び出したスズの肩ごと、両腕で包み込むようにブランケットを掛け直してくれる。

抱き締められているみたいでドキドキした。

息を吸って吐く、みたいなリズムで、
ツキくんは「好き?」って訊いた。

世界中でその言葉しか存在しないみたいな調子で、
スズは「好き」って言った。

こんな風に「好き」を確認されるのは
もう何度目だろう。

普段は飄々としているくせに
二人っきりの時のツキくんはやたらと甘い。

美桜ちゃんにもこうやって「好き」を確認していたのかな…。
そんなこと、ツキくんの腕の中で想像もしたくない。

目を細めて薄く微笑んだツキくんは
安心した子どもみたいに、すーっと眠ってしまった。

「じゅうにっ…」

十二時だよって言おうとしたけれど、
言えなかった。

このままくっついていられるのなら
この時間を自ら手放すなんてバカなことはしない。
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