血管交換シヨ?
ツキくんにゆるく抱き締められたまま、
差し込む光の筋を視線で追った。

壁、というよりはもはやそれ自体が本棚であるかのようにびっしりと本しか見えない壁。
光の筋が導かれるように伸びている。

天の川みたいだって思った。

空気中のちりがキラキラと瞬いていて
それすらも神聖な星々に見える。

本棚の上側の壁には、美術館で買ったのか
絵画のようなポストカードが何枚か、マスキングテープで貼られている。

そのどの絵にもスズはピンとこない。

そうしてひっそりと、一人でその事実に傷ついてみたりする。

ツキくんのせいでは決してない。
スズ自身の浅学さに傷つくんだ。

この十五年間でもう少し文学や芸術に興味を持っていれば。
今から大急ぎで勉強しなくても、
ツキくんとおんなじ温度差で話ができるのに。

そうしたらツキくんはスズに運命なんか感じちゃったりしてさ…。

でもでも!
今から好きな人の為に努力ができるって最高だよね?
きっとそう!

なんてバカみたいに一人一喜一憂大会なんて繰り広げてしまう始末。
恋って忙しい…。
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