無気力クールな僕ですが、真面目な天然規格外男子に沼りました。

夜の公園で砂遊び


「だって、寂しかったんだもん」


 映画館を出てすぐのベンチで、ルミは震える声で言った。
 悔しそうにぎゅう、とスカートの裾を握りしめるルミは、トレードマークの元気なツインテールが心なしかしおれて見える。


「意味わかんねー」


 そのルミの前に立って冷たい声を落とした俺は、ルミの彼氏。
 バイト行くついでに隣の服屋に寄ろうとしたところ、彼女の浮気現場に遭遇してしまった。


「お前が先に浮気したんだろ!? ルミちゃんは悪くない!」


 横から割って入ったのはルミと手を繋いで映画館に入ろうとしていた浮気相手Aである。


「あんたは黙ってて」


 目線もくれずに言うと、Aはグッと黙り込んだ。

 近くを通る人々は皆、俺たちを横目で凝視していく。
 気にするなと言うほうが無理な話かもしれない。
 人が大勢行き交う出入口で、映画ばりの修羅場が繰り広げられているんだから。

 あれヤバくない?とか、大方あの金髪イケメンが悪い、とか外野のテキトーな声が聞こえてくる。

 〝あの金髪イケメン〟と言うのは十中八九俺のことだ。
 でも、他人の悪口に付き合ってる余裕はない。


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