無気力クールな僕ですが、真面目な天然規格外男子に沼りました。
 その場にいる全員から、一斉に注目を浴びる。
 気っまず。
 俺は愛想笑いを残して、踵を返した。

 そのまま足早に校舎へ向かう。
 その道中でもすれ違う生徒たちの不躾な視線を感じた。

「あ、安斎だ」
「ルミ姫と別れたらしいよ」
「え!?嘘!!推しカプだったのに〜!」

 聞こえてるっつの。
 聞こえないふりするのも大変だから、もうちょっと声を押さえて欲しい。
 まぁ、いま新鮮なニュースにみんな盛り上がってるだけで、すぐに飽きて風化していくだろう。
 男女の別れなんて珍しい話でもないし。
 でもこれ以上目立たないように、新しいクラスではなるべく静かに過ごそう。
 そう心に決めて、E組の扉を開けた。
 するとさっそく知った顔が目に飛び込んできた。

「あ。佐吉(さきち)
「聡太!」

 着崩した制服が見るからにやんちゃな赤髪坊主の男子は、幼なじみの遠野(とおの)佐吉(さきち)
 クラスのやかましい男子筆頭の佐吉とローテンション筆頭の俺は、いわゆる腐れ縁だ。
 同じクラスになるのは、小学校から数えて五回目ぐらい。
 佐吉は端的に言うと、アホ。
 まぁ悪いやつじゃない。

< 13 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop