無気力クールな僕ですが、真面目な天然規格外男子に沼りました。
「そうだ、そんなことよりお前、隣、やべぇぞ……!」
「え?」

 となり?

「ほらここ……」

 珍しく佐吉が声を潜ませ、安斎と書かれた俺の席と、その隣を指さした。
 俺の席は一番後ろの窓際から二番目で、窓側の隣の席には『堂前』と書かれている。

「この隣の席の堂前(どうまえ)ってやつ。 見てみろよ」

 何かに怯えるような顔の佐吉が、目線で後ろを示した。

「?」

 見ると、俺が座る予定の隣の席に男子が姿勢正しく座っている。

「……わ」

 七三分け、だ。
 流行りのかっこいいやつじゃない。
 ワックス? いや、ポマード?
 とにかくなにかをつけすぎて、頭皮に髪がベッタリ張りついてピカピカに光っている。
 ギャグか? ウケ狙いなのか?
 だとしてもスベッているのでツッコむと巻き込み事故を起こしそう。

「なんかヤバそうじゃね?」
「うん。ヤバそうだな」

 周りが一定の距離をあけてヒソヒソしているにも関わらず、ただ一点を見つめて姿勢を正して座っている。
 明らかに普通じゃない。異質。
 めんどくさそうな予感に、眉間に皺が寄った。

「……ん?」

 ただ、そのキリリとした表情に見覚えがあった。
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