無気力クールな僕ですが、真面目な天然規格外男子に沼りました。
「ありがとうございます、安斎くん」

 ナギオは気をつけをして礼をした。
 全部の動作がキビキビとしていて、硬く力んでいる。
 見てるこっちが気疲れしてきて、俺は目を逸らした。

「どういたしまして。 はい、戻ろ」

 気怠く言う俺に、また「はい!安斎くん!」と舎弟みたいな返事を寄越すナギオ。
 もうちょっと涼やかに、軽やかにできないものか。
 
 それからナギオと二人、教室に向かって廊下を歩いた。
 すると、去年担任だった木田(きだ)浩二(こうじ)と出くわした。

「お、安斎。 今年もよろしくなー」
「浩二くんA組?」
「こら、浩二くんじゃなくて先生。 お前今年ははしゃぎすぎんなよー」
「はしゃいでんのは遠野。俺は横にいるだけだから」
「横にいるだけで共犯ー……ん? なんだ、堂前も一緒か。 髪型が違うからわからなかった」
「木田先生、本日からよろしくお願いします」
「ああ、よろしくな。 てかお前らもう仲良さそうだな。 さっそく友達ができたようで安心したよ」

 友達……?

「友達……」

 ナギオが目を輝かせている。

「安斎。堂前はこの学校のことまだ知らないから色々頼んだぞ」

 先生は俺の肩をポンポンと叩いて去っていく。
 横を見ると、ナギオと目が合う。

 えっ、これから毎日突っ込むどころ多すぎるこいつの世話を俺がすんの?

「不束者ですが、よろしくお願いします!」

 嫁入りの勢いで言われた。

「……おん」

 だめだ。 俺には荷が重い。
 ナギオには悪いが、なるべく関わらない方向で行かせてもらう。



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