無気力クールな僕ですが、真面目な天然規格外男子に沼りました。
 まあ、なんとなくわかる。
 普通じゃないものが排除されるっていうのは、集団生活の定石だったりする。

「だから石塚くんに頼ってもらえて嬉しかったんです。 僕が代わることで石塚くんがいま楽しいなら、よかったです。 不器用なので何もできませんけど、これぐらいならできますから。 役に立てて嬉しいです」

 ……なんかもう、聞いてらんねぇ。

「へー。やさしいね」

 やさしくて、素直で、真面目ないいやつ。
 集団の中にいると、そういうやつはずるがしこいやつに利用されて、陰で笑われる。
 そういうものだ。
 教室っていう狭いひとつの箱の中でみんな図太く、うまくかわしながら人間関係を構築している。
 俺もその中の一人だ。
 ナギオみたいなやつが損するのを助けずに、見なかったことにするやつらの中の、一人。


「でも一番嬉しかったのは、安斎くんに会えたことです」


 ドキッとして、思わず手を止めた。
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