無気力クールな僕ですが、真面目な天然規格外男子に沼りました。




 道行く人もまばらな二十二時三十分。
 バイトを終えた俺は、駅から家までの途中にある静かな児童公園を自転車を押して歩いていた。
 沈丁花の香りが鼻を掠めた。

 そういえばこの花の香りが沈丁花だって教えてくれたのは、ルミだったな。
 俺はスマホを取り出してメッセージアプリを開き、ルミとのトーク画面をタップする。

 ルミから長文のメッセージ。
 内容は【別れたくない】とか【世界で一番愛してる】とかそういう感じで、ポエムっぽい。

 その中で【そうたがいないと生きていけない】という言葉が目にとまった。

 映画館で俺が『もう無理』『別れよう』と言った時の、ルミの血の気の引いた顔を思い出す。
 キリ、と罪悪感が胃を絞めつけた。

 ……落ち着け。
 ルミは俺がいなくても普通に生きていくはずだ。
 お互いのためにも、別れた方がいい。

 自分に言い聞かせて、ブロックボタンをタップする。

 【❀rumi❀をブロックしました】

 浮かび上がったポップアップを確認して、おでこを自転車のグリップにもたれさせてため息を地面に落とす。
 今日何度目のため息だろう。

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