無気力クールな僕ですが、真面目な天然規格外男子に沼りました。
「助けてください」


 なんとなく首を縦に振れない。
 いい年した男が、砂場に埋まって抜け出せなくなるなんてことある?
 実はこれが罠で誰かが俺をどうにかしようと控えてるんじゃないかって周囲を見渡してみるけど、それらしい人はいない。


「えっとー……あ、通報していい?」
「嫌です。 怒られそう」

 子供か。

「お願いです。 少しこの砂を掘ってくれるだけでいいんです」
「……」

 俺は、今日はひどく疲れてる。心も体も。
 もう面倒なことに巻き込まれたくない。
 
「悪いけど別の親切な人に頼みな。 俺急いでるから」
「のんびり歩いてましたよね」
「のんびり急いでたんだよ」
「……」

 しばしの沈黙。

「……おねがいします、親切な金髪さん。僕が今頼れるのはあなたしかいないんです」
「えー」
「助けてください」
「んー……」
「助けて!!」

 クワッと顔に力を入れた生首くん(仮)の目尻に涙が溜まり始めた。
 さすがにその涙は嘘じゃないと見て、ため息をついた。 ああ、またため息ついっちゃった。

「わかったから泣くなよ」

 自転車のスタンドを下げて停め、生首くん(仮)の近くの砂を掘り始める。
 あーあ、お気に入りの白Tに砂がついた。この汚れ落ちるかな。

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