悪事通報アプリ
☆☆☆

花乃と一緒にいることは本当に楽しかった。

共通の経験があることも、共通の敵があることもふたりの絆を強くしているように感じられる。

「あら、おかえり」
家に帰ると今日はお母さんの方が先に帰ってきて夕飯の準備をしていた。

「ただいまぁ」
「なんだか今日は機嫌が良さそうね?」

帰ったばかりの私を見てお母さんもなんとなく嬉しそうな顔になっている。
「え、そう?」
私は両手で自分の頬を包み込んだ。

そんなにわかりやすく顔に出ていただろうか。

「そうよ。2年生に上がってから暗い顔をしていることが多かったから、心配だったのよ?」

もう言ってもいいだろうと判断したのか、お母さんがそんなことをいい出したから心底驚いた。

自分が学校でどんな目に遭っているのか、もちろん両親には伝えていない。
それでも親は敏感に子供の変化を感じ取っていたみたいだ。

とたんに恥ずかしい気持ちになってうつむいてしまった。
なにも言えずにいるとお母さんが近づいてきて私の肩に手を置いた。

「なにかあったら相談するのよ? いつまで経っても夢奈は私の子供なんだから」
その優しさに頬を染めて、私は小さく頷いたのだった。
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