悪事通報アプリ
しばらく周囲をうかがっていた蒼が慣れた手付きで万引をしてコンビニから出ていった。
「なにこれ。これだって私には関係ないし」

美羽だってこれがいつ撮影されたものかわかっているのだろう、動揺を隠せないようで目が左右に揺れている。

まさか録画されていたなんて、思ってもいなかったに違いない。

「美羽のまわりってどうしてこんなに問題ばかり起きるんだろうね? もしかして美羽がなにかを仕組んでるからじゃないの?」

花乃が白々しく質問する。
「はぁ? 今回のことも、その動画にも私は写ってなかった。私は関係ないでしょ!」

「じゃあ、これは教育委員に提出するね? そしたら蒼は謹慎処分を受けることになるかな? 学校でずっと一緒にいる美羽もなにか言われるかもしれないね?」

花乃が更に追い詰める。
教育委員会という言葉を聞いて美羽がたじろいだのがわかった。
教育委員会の中には美羽の父親と親しい人が何人もいる。

立場はほぼ対等で、ここでは美羽だけが優遇されることはない。
今までの悪事をもみ消して勉強を頑張って、それらがすべてパーになる可能性があることだった。
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