悪事通報アプリ
「……知らない。私は蒼の友達じゃないから、なにもわからない」
急にしおらしい態度になったかと思うと、美羽はその場に膝をついて懇願してきた。

「だからお願いです! その動画は消してください!」
床に額をこすりつける美羽に驚き、私は花乃を見た。

花乃は口元を手で隠して笑いを必死に押し殺しながら、花乃を見下ろしていた。
「お願いします! 消してください!」

真っ青になって叫ぶ美羽の右手を花乃が踏みつけた。
美羽が顔をあげて花乃をにらみつけるが、花乃は勝ち誇った表情を浮かべている。

「なにその顔。あんたにとってこの動画は驚異なんだよね? それをバラ巻かれてもいいの?」

友人が万引しているだけの動画だ。
美羽自身が言っていたように美羽は写っていないし、万引を強要したともわからない動画だ。

それが、こんな威力を発揮するとは思ってもいなかった。
「すみませんでした」

美羽がまた青ざめて頭を下げる。
あの美羽が。
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