悪事通報アプリ
それをジッと見つめてしまうのは、きっとついさっきアプリを使って交通事故を雄馬に押し付けてきたからだ。

なんとなく花乃無言になって大通りを挟んだ歩道を見つめる。
もうすぐ渡り終わると思った次の瞬間だった。

スピードを上げた白い車が突然交差点内に侵入してきたかと思うと、横断歩道を渡り終えようとしていた雄馬に激突していたのだ。

雄馬の体が跳ね飛ばされて空高く舞い上がり、そして落下してくる。
白い車はその間にすでに方向転換を始めていた。

「あれ、逃げるつもりだよ!」
花乃が叫び、咄嗟に車のナンバーに視線を向けた。
4つの番号を頭に刻み込む。

地面に叩きつけられる雄馬と、走り去る車をみて私は呆然と立ち尽くしてしまったのだった。
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