悪事通報アプリ
美羽が私達に気がついて足を止めた。
その手には白い包帯が巻かれていることに気がついた。

「別に、朝からなにかする気はないから」

警察署の前だし、と建物へ視線を向けると美羽は安心したように体の力を抜いた。

そしてまた歩き出そうとしたそのときだった。
白い車が美羽の後ろに近づいてくるのが見えた。

まだ距離が遠くてナンバーは見えないけれど、咄嗟に美羽から身を離した。

交通事故に巻き込まれるのはごめんだから。
花乃も私のすぐ隣にやってきて美羽が首をかしげる。

違和感に気がついた美羽が振り向こうとした瞬間、車が速度を上げた。
それと同時に私のスカートのポケットでスマホが震える。

スマホを取り出すと、アプリからの通知が来ていた。
『削除したため、効果は無効になりました』

そんな文章が目に入った次の瞬間、私の体に強い衝撃が走っていた。
隣に立っていた花乃と一緒に車に跳ね飛ばされて、警察署の壁に背中を打ち付けたのだ。

一瞬車に乗り上げたためにフロントガラスは割れて蜘蛛の巣状にヒビが入っている。
血まみれになった私と花乃はまるで糸の切れたあやつり人形のように地面に崩れ落ちていく。
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