悪事通報アプリ
一番無難なものを選んだとき、花乃が私の顔を覗き込んできた。
「本当にそれでいいの? 遠慮してない?」

そう聞かれてドキリとする。
どうしてわかっちゃうんだろう。

「うん。イチゴがいいの」
「わかった。それならイチクッキーが乗っかってるこっちにしよう」

花乃はそう言うとさっさとちょっと豪華なクレープを注文してしまった。
「ごめんね、ありがとう」

クレープを受け取って外へ出ると、ちょうど外にあるベンチがあいたところだった。
私達はそこに座って食べることにした。

クレープはとても甘くて、イチゴの酸味も感じられてすごく美味しい。
人気店になったのが見た目の可愛さだけじゃないことがわかる味をしている。

「夢奈は私に遠慮なんてしなくていいんだからね?」
バナナクレープを食べながら花乃が言った。

「夢奈がいなかったら今頃私、どうなってたかわかんないし」
そう言って一瞬だけ暗い表情を見せる。

ほんの一時とはいえ、美羽たちのターゲットになってかなり怖い思いをしたに違いない。
その気持は私も苦しいほどに理解できる。

「うん、わかった」
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