悪事通報アプリ
私と花乃は目を見合わせ、そして気が付かれないように笑いあった。
アプリの効果がさっそく出始めたみたいだ。

「ちょっと晴希、あんたなに言ってんの?」
蒼の声色が険しくなる。
だけど晴希だって本気だ。

蒼を睨みつけて距離を縮めると、その胸ぐらを掴んだのだ。
「ちょっと、なにすんの!?」

「俺の命令が聞けねぇのかよ」
晴希はそう言うと右手に拳を作り、躊躇なく蒼の頬を打ったのだ。

手加減はしているようだし、雄馬に比べれば軽いパンチだ。
だけど蒼は驚いてその場に座り込んでしまった。

「な、なんで……」
震える目で晴希を見上げる。
その声も、体も震えていた。

「ま、万引してこいっつったんだよ。早く行け」
晴希の目はもう私の方を見ていない。

完全にターゲットを蒼に変えた証拠だった。
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