秘め恋10年〜天才警視正は今日も過保護〜
どういう意味の好きなのか
カーテン選びを口実に大和にメッセージを送ったのは、二日前になる。

眠れずに一夜を過ごした翌日も返信はなく落ち込んだが、今は半分諦めの心境だ。

(上官の娘さんとの結婚、話が進んでいるのかも。私と連絡を取り合っていたら相手の人は嫌だろうし、距離を置こうとするよね。わかるよ。わかるけど!)

気持ちのもう半分は怒りで、直接ぶつけられない文句が心の中を渦巻いている。

(だったら、今後は会えなくなると言ってよ。もしかすると私の思い過ごしで、仕事が立て込んでいたから返信できなかっただけで、今日は『遅くなってすまない』という連絡がくるかもって、何度も携帯を見ちゃうじゃない!)

怒りを力に変えて重たいごみ袋を持ちあげた。

今日のアルバイトは引っ越し屋で、三十分ほど前に現場での仕事を終え、他の作業員と一緒にワゴン車で事務所に戻ってきた。

そのあとは暗くなった寒空の下の駐車場脇で、ゴミの分別をしている。

引っ越しで出た不用品やゴミの処分も有料で請け負っているからだ。

十八時になると、制服姿の事務員が声をかけにきた。

「時間になりましたので、アルバイトの方は上がってください」

「はい。お先に失礼します」

日給で六千円をもらい、着替えをして事務所を出た。

駐車場で愛車にまたがる前に携帯を出し、ため息をつく。

(ほらね、返信なし。わかってた。もう期待してないから平気)

苦しい心にそう言い聞かせ、ヘルメットをかぶったその時、ポケットに入れたばかりの携帯が鳴った。

ハッとしたが、これ以上落ち込みたくないので、大和以外の知り合いの中から電話をかけてきた相手を予想する。

(きっと沢ちゃんだ)

多野元の件で他のライターに負けたことは、わざわざ報告しなくてもわかっているだろう。

新しいネタを買わないかという連絡だと考えた。

(私もそうしようと思っていたからちょうどよかった――って、大和さん!?)

一気に心の靄が晴れた。

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