秘め恋10年〜天才警視正は今日も過保護〜
警視庁から葵の自宅までと、ここからの帰宅の距離はだいたい同じくらいだ。
大和の行動はいつも素早いので、寒空の下で待たせないよう急いで愛車にまたがった。
それから二十分ほどして、久しぶりに会える喜びと結婚報告をされるのではという恐れを抱え、アパートの前に着いた。
駐輪スペースに愛車を止めて正面玄関に向かうと、目の前にタクシーが停車して大和が降りてきた。
スーツに黒いコート姿の彼はいかにも仕事ができそうな雰囲気で、頼もしい立ち姿に鼓動が速度を上げる。
精悍な眼差しを向けられると頬が熱くなり、恋心の制御が日に日に難しくなっていると実感した。
それでもなんとか平静を装って声をかける。
「仕事帰りでしょ? 忙しいなら無理して会ってくれなくていいのに」
「そういうわけにいかないだろ」
怒り顔ではないが、口調にほんの少し苛立ちを感じた。
せっかく会いに来てくれた彼に可愛くない言い方をしたせいではない。
大和はそんな些細なことで怒らない人だから。
(どうして不機嫌なの?)
なにかやらかしただろうかと振り返ってみたが、二日前にカーテン選びの件で相談しただけだ。
しかもそれについてはひと言も返信がなく、怒る権利があるとするなら葵の方だろう。
「行くぞ」
大和の行動はいつも素早いので、寒空の下で待たせないよう急いで愛車にまたがった。
それから二十分ほどして、久しぶりに会える喜びと結婚報告をされるのではという恐れを抱え、アパートの前に着いた。
駐輪スペースに愛車を止めて正面玄関に向かうと、目の前にタクシーが停車して大和が降りてきた。
スーツに黒いコート姿の彼はいかにも仕事ができそうな雰囲気で、頼もしい立ち姿に鼓動が速度を上げる。
精悍な眼差しを向けられると頬が熱くなり、恋心の制御が日に日に難しくなっていると実感した。
それでもなんとか平静を装って声をかける。
「仕事帰りでしょ? 忙しいなら無理して会ってくれなくていいのに」
「そういうわけにいかないだろ」
怒り顔ではないが、口調にほんの少し苛立ちを感じた。
せっかく会いに来てくれた彼に可愛くない言い方をしたせいではない。
大和はそんな些細なことで怒らない人だから。
(どうして不機嫌なの?)
なにかやらかしただろうかと振り返ってみたが、二日前にカーテン選びの件で相談しただけだ。
しかもそれについてはひと言も返信がなく、怒る権利があるとするなら葵の方だろう。
「行くぞ」