秘め恋10年〜天才警視正は今日も過保護〜
先に玄関を潜った大きな背を追う。
すると前から誰かが来たようで、足を止めた大和が郵便受けの方に体を寄せて進路を譲り、葵の手を引っ張った。
こんなの慣れているはずなのに、繋がれた手を必要以上に意識してしまう。
「すみません。あら、高野さん?」
会釈して通り過ぎようとした女性は菜美恵だった。
「こんばんは」と挨拶を交わしたあと、チラッと大和を見た彼女の視線が葵に戻された。
どちら様かと問われた気がして答え方に迷う。
(兄ではないし、友人という感じでもないし、大和さんをなんと紹介すればいいんだろう?)
「この人は、ええと――」
口ごもってしまうと、察したように菜美恵が言う。
「ごめんなさい、詮索する気はなかったんです。彼氏さんですよね?」
(そう見えるの?)
一瞬、喜んでしまったが、大和は嫌だろう。
勘違いを否定しなければと思った時、先に彼が口を開いた。
「そうです。一階の方ですか? 葵がお世話になっております」
(えっ!?)
「素敵な彼氏さんですね。高野さんもおきれいなのでお似合いです」
(ええっ!?)
「それでは、これで。ちょっと出かけてきます」
今日もまた、夫と子供が入浴している間に買い物だろうか。
すると前から誰かが来たようで、足を止めた大和が郵便受けの方に体を寄せて進路を譲り、葵の手を引っ張った。
こんなの慣れているはずなのに、繋がれた手を必要以上に意識してしまう。
「すみません。あら、高野さん?」
会釈して通り過ぎようとした女性は菜美恵だった。
「こんばんは」と挨拶を交わしたあと、チラッと大和を見た彼女の視線が葵に戻された。
どちら様かと問われた気がして答え方に迷う。
(兄ではないし、友人という感じでもないし、大和さんをなんと紹介すればいいんだろう?)
「この人は、ええと――」
口ごもってしまうと、察したように菜美恵が言う。
「ごめんなさい、詮索する気はなかったんです。彼氏さんですよね?」
(そう見えるの?)
一瞬、喜んでしまったが、大和は嫌だろう。
勘違いを否定しなければと思った時、先に彼が口を開いた。
「そうです。一階の方ですか? 葵がお世話になっております」
(えっ!?)
「素敵な彼氏さんですね。高野さんもおきれいなのでお似合いです」
(ええっ!?)
「それでは、これで。ちょっと出かけてきます」
今日もまた、夫と子供が入浴している間に買い物だろうか。