秘め恋10年〜天才警視正は今日も過保護〜
自分の速い心音が耳元で聞こえる。

今度は期待を抑えようとは思わず、喜びで声を震わせながら問う。

「本当に……?」

「ああ。前から葵に惹かれていた。だが、その気持ちに蓋をして、自分でも気づかないようにしていたようだ。蓋が外れたのは最近だ。どんどん魅力的になる葵を妹のように思えなくなった」

膨らんだ愛情が、彼の心の中にある箱を押し開けるところを想像した。

嬉しくて目に浮かんだ涙を拭いながら、恥ずかしさをごまかすように照れ笑いする。

「あとでお礼を言わないと」

「誰に?」

「ドレスを貸してくれた沢ちゃん。専門学校時代の友達が情報屋をやってるって前に話したでしょ? 私に色気がないから、一緒に暮らしてもなにも起こらないと相談したら、このドレスを勧められて。なにを着ても私じゃ無理だと思ったけど、すごい効果で驚いてる」

ドレスを借りるにあたっての経緯を明かすと、クルリと振り向かされた。

たちまち顔が火照り、恥ずかしさでなにを話していいのかわからなくなる。

心なしか大和も頬が赤く、眉尻を下げて苦笑した。

「その恰好に欲情したから好きだと言ったわけではないぞ。俺に見せるために着たのがわかったからだ」

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