秘め恋10年〜天才警視正は今日も過保護〜
寝言の『好き』がどんな意味なのかと悩んでいたが、ドレスのおかげで異性として愛されているのが伝わったそうだ。

「欲情って……。大胆なドレスだけど誘ったわけじゃないよ。ちょっとドキドキしてくれたらいいなと思っただけで――」

「してるよ。いつも」

「えっ?」

「お前を想うだけで鼓動が速まる」

大和の右手が頬に触れ、顎先まですべり下りてすくわれた。

精悍な印象の目が今は熱っぽく潤み、色気を醸す彼を初めて見て驚いた。

形のいい唇がゆっくりと距離を詰めてきて、鼓動が最高潮に高まる。

(キスするの? どうしよう。心の準備が間に合わない)

緊張で体を強ばらせ、恥ずかしさと動揺でどうにかなりそうな気分だが、逃げたいとは少しも思わなかった。

覚悟が決まらない中で、ぎゅっと目を閉じると――。

額にチュッと柔らかいものが触れ、すぐに離れていった。

(あれ?)

肩すかしを食らった気分で目を開けると、大和が片手で顔を覆って横を向いている。

「勘違いされる前に言っておくが、子供扱いじゃないぞ。その逆だ。お前がそんな顔をするから、唇を奪えば止められなくなりそうな気がしたんだ」

(どんな顔……?)

思わず頬に触れて確かめてみる。

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