秘め恋10年〜天才警視正は今日も過保護〜
多野元には大手製薬会社から違法献金の噂があり、二か月ほど前から調べて記事にできそうな材料は手に入れていた。
あとは決定的な写真が欲しいと思い、尾行している。
(今回は当たりでしょ)
今日は金曜で時刻は十八時。
この道をまっすぐ行けば、政治家御用達の料亭がある。
大手製薬会社の役員と並んでいるところをカメラに収められたなら、すぐに記事を仕上げて出版社に持ち込むつもりだ。
気合十分にアクセルを開けた葵だったが、タクシーは料亭に向かわず横道に入った。
この辺りは庶民向けの飲食店がごちゃごちゃと建ち並んでいて、政治家が密会に使いそうな店はない。
(えっ、ハズレ?)
それを予感した時、タクシーがハザードランプをつけて停車した。
降車した多野元が古めかしい外観の喫茶店に入っていく。
少し間を置いてから葵も店の前に愛車を止め、ヘルメットを脱いだ。
肩下までのストレートの焦げ茶色の髪が風に揺れる。
ドアの横の立て看板を見ると、オムライスやハンバーグなど食事メニューも充実していて、洋食屋でもあるようだ。
(ここで賄賂の受け渡しは……ないよね)
多野元の出身大学がこの近くだったと思い出した。
その頃から気に入っていて、今でもたまに食べに来るのではないだろうか。
あとは決定的な写真が欲しいと思い、尾行している。
(今回は当たりでしょ)
今日は金曜で時刻は十八時。
この道をまっすぐ行けば、政治家御用達の料亭がある。
大手製薬会社の役員と並んでいるところをカメラに収められたなら、すぐに記事を仕上げて出版社に持ち込むつもりだ。
気合十分にアクセルを開けた葵だったが、タクシーは料亭に向かわず横道に入った。
この辺りは庶民向けの飲食店がごちゃごちゃと建ち並んでいて、政治家が密会に使いそうな店はない。
(えっ、ハズレ?)
それを予感した時、タクシーがハザードランプをつけて停車した。
降車した多野元が古めかしい外観の喫茶店に入っていく。
少し間を置いてから葵も店の前に愛車を止め、ヘルメットを脱いだ。
肩下までのストレートの焦げ茶色の髪が風に揺れる。
ドアの横の立て看板を見ると、オムライスやハンバーグなど食事メニューも充実していて、洋食屋でもあるようだ。
(ここで賄賂の受け渡しは……ないよね)
多野元の出身大学がこの近くだったと思い出した。
その頃から気に入っていて、今でもたまに食べに来るのではないだろうか。