秘め恋10年〜天才警視正は今日も過保護〜
「大好きだと言われたのは何年ぶりか。最近はうっとうしがられてばかりだったから、嬉しいな」

(嬉しいの? 本当に?)

瞬時に顔が熱くなり、胸が期待に弾みだす。

(勇気を出せば、妹のポジションから抜け出せる? 怖いけど、今なら言える気がする)

汗ばむ両手を握りしめ、一世一代の覚悟で告白しようと口を開きかけたが――。

「子供の頃は会いにいっただけで喜んでくれたよな。中学時代のお前は大和お兄ちゃんと呼んでくれたのに、さん付けに変わった時は寂しかったな。呼び方を戻してもいいんだぞ。そうすれば俺も遠慮なく助けてやれる」

生活の援助をしたくても、本当の妹ではないからと葵に拒否されるので、歯痒い思いをしているそうだ。

兄のような優しい目をして話す彼に、葵はまた傷つけられた。

(よーくわかったよ。昔も今もこの先も、妹扱いをやめる気がないってことだよね。そっちがその気なら――)

悲しみと悔しさを怒りに変えた葵は、満面の笑みを作って立ち上がる。

「大和お兄ちゃん、窓にシャッターをつけてくれてありがとう」

本当に呼ばれるとは思っていなかったのか、彼が驚いた顔をした。

「それでね、妹からのお願いなんだけど」

彼の手を引いて立ち上がらせた葵は、キッチンに向かう。

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