秘め恋10年〜天才警視正は今日も過保護〜
収納できなかった食器がダンボール箱の半分を埋めていて、それを抱え上げると大和に押しつけた。

「はい、これをお願いね。保管してくれるんでしょ? 今すぐ持って帰って」

「せっかく半休を取ったから、夕食を一緒に――」

「お兄ちゃん、ごめんね。このあと約束があるんだ。妹だって大人になるんだよ。誘ってくれる男の人は大和さんだけじゃない」

途端に大和の眉間に皺が寄る。

「この前、寿司屋では男に興味がないような話をしていたよな?」

「お兄ちゃんには話せないこともあるんだよ」

目を見開いている彼をグイグイと玄関ドアの外まで押しだした。

「バイバイ」と笑顔でドアを閉める。

「葵!」

外から呼びかけられたが、内鍵までかけて中には入れないという意思表示をすると、遠ざかる足音が聞こえた。

(お兄ちゃんと呼んでもいいなんて言うからだよ)

妹扱いされるのが嫌で反抗し、その態度がかえって子供のようで、なかなか妹ポジションから抜け出せない。

素直に甘えれば異性として意識してもらえるのかというと、それもなさそうだ。

どうあがいても、ひとりの女性として見てもらえないと思い、ため息をついた。

彼がさっきまでいた場所に座り、テーブルの上の飲みかけのマグカップを見つめる。

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