天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
全部の辻褄が合った気がした。

そうだよな。
よく考えてみれば翠がそういう女じゃない事くらい分かるよな。

なんでか冷静になれなかった。

そしてふと気づく。

翠とぶつかった時、一瞬しかなかったのにしっかりと顔を覚えたのも。

パリで勘違いとはいえキスしたと思い苛立ちが抑えられなかったのも。

丈慈が妻と歩いていて、翠を解放させたいと思ったのも。

翠が身を投げ出そうとしてると思って放っておけなかったのも。

翠だけのためにピアノを聴かせたいと思ったのも。

全部、全部。

翠が好きだからか。

なんでこんな簡単な事に気づかなかったんだ俺は。

しばらく色恋沙汰から遠ざかっていたからといって鈍すぎだろ。

そして翠だ。
コイツも絶対鈍い。

さてどうしたもんか。

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