天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
そして写真を撮るのを待つ。

「本当にありがとうございました。申し訳ないです」

「ははは。いえいえ」

「お兄ちゃん、ありがとう!」

「おう」

俺はポンと頭を撫でた。

「すみませんデート中に。それじゃ失礼します! ほら行くよ!」

そう言って親子は嬉しそうに歩いて行った。

「翠、ほら乗って」

そう言って今度は助手席を開ける。

「あ、うん。ありがと」

「それじゃ送ってくな」

「うん。お願いします」

ん?
なんか元気ない?

「翠? どうかしたか?」

「え? いや? なーんも!」

「あそう? 飯付き合ってくれてありがとうな。それから、あの手作りの料理も。美味かった」

そう言えば、何故か翠は窓の外を見る。

「なら、よ、よかった」





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