天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「冷蔵庫とか明日には届くみたいだ」

「そ、そうなんだ! よかったね!」

「予定より早まってよかったよ」

「そ、そうだね!」

「あれ、わざわざ作ったとか?」

「え? 違う違う! 作りすぎただけ! 気にしないで!」

なんでさっきから外ばっかり見てんだ?

「翠」

「ん?」

呼んでもこっちを見ない。

「外、楽しい?」

「た、楽しい」

「ははは」

なんだそれ。

そして間も無く翠のマンションにつく。

トランクからクーラーボックスを出して一緒に部屋まで向かう。

「はい。ありがとな。ごちそうさま」

「あ、うん。私こそ、今日もご馳走様なっちゃって。ありがとう」

やっと俺を見た。
めちゃくちゃ抱きしめたい。

自覚した途端、翠が余計に可愛く見える。
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