天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「ほら、早く入れ。襲うぞ」

「んな!? そ、それじゃね! ありがとう! お休み!」

そう言って逃げるように中に入った。

クククク。
慌てすぎ。

今ので少しは意識しただろうか?

可愛いな。
いつまで俺、手出さずにいられるかな。

家具や家電も無事に届いてやっと普通の暮らしができると思ったが、週末ソロ公演のため飛行機に乗ってウィーンへ飛ぶ。

「律、あの楽曲よかったよ」

「まだまだ直すところはあるけどな」

マネージャーの大和と話す。

「女でも見つけたか?」

「まぁ」

大和がバッと俺を見る。

「おい。誰だ」

「うるせぇ。まだなんもねぇ」

「お前が?」

「……ああ」

「珍しい事もあんだな」

「この歳になればそうだろ。遊びで終わらせたくない」

「へぇ。本気なんだ?」

「真剣には考えてる」

「…真弓は?」

真弓(まゆみ)とは、大和の3歳下の妹。
俺の幼馴染。

「なんで真弓?」

「いや…。今回は会わないのか?」

「別に約束してない」



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