天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
無事に今回も満員御礼で公演が終わり控え室で着替えをしていると、ドアがノックされた。

大和がドアを開ける。

「大和! 律!」

真弓が俺たちの名前を呼んで中に入ってきた。

「おう」

「律、今回も素晴らしい演奏だった!」

「来てたのか」

「当たり前じゃない! 日本はどう?」

「とても良い所だよ」

「そう…。これから帰るの?」

「いや、明日はドイツ」

「もっとゆっくりしていけばいいのに」

口を尖らせる真弓。

「また今度な」

「頑張ってね! それじゃ!」

「ああ。真弓も」

真弓もお袋と同じように声楽家をしている。
大和だって今でこそ俺のマネージャーなんてやってるが元々はピアニストだった。

「お前はピアノ弾かないのか?」

「俺はお前に片っ端から賞を掻っ攫われて自分の限界に気づいたの」

「俺はお前のあの雑な演奏好きだけどな」

「ははは! よく言うよ」

「ありがとな、大和」

「好きでやってんだ。お前は黙ってピアノ弾いとけ」
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