天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
俺がソリストとしてこうして世界を周れるのも、大和のおかげだ。

ピアニストとしてはハッキリ言って本人も自覚しているようにまぁまぁだったが、逆にマネジメントは素晴らしい才能を発揮してくれている。

そしてドイツでの公演も無事に終わって日本に戻る日、飛行機の中で大和に言われる。

「なぁ。実は俺も女できた」

珍しくしおらしい大和の顔を見て思わず笑ってしまう。

「ははは。いや、うっすら思ってたんだよ。珍しくさっぱり家にこねぇし」

「完全に持ってかれたわ」

「結婚すんのか?」

「ああ」

「日本人?」

「そ。CAしてる」

「そうか。良かったな」

「お前、俺のためにも頑張ってくれよ。それで飯食ってんだから」

「ははは。お前こそ頼むぞ」

「ああ。お前は? 好きな女」

「まだ俺だけ」

「ククククっ。珍しく振り回されてんな。写真とかないの?」

「いや…」

あるっちゃある。
なんか公演中に送られてきた。
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