天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「見せろ」

俺は渋々見せる。

「は? どれ」

「チャイナ服」

「ははは! 何これ。ハロウィンの仮装?」

「らしい」

どうやら日本ではハロウィンのパーティーが週末にあったらしくご機嫌でこんな写真を送ってきやがった。

「どえらい別嬪だな」

「ああ」

「この男たちは?」

「それ全員親戚らしい」

「は? どーなってんのコイツら」

「本当それ。兄貴も知ってんだけど、相当いい男だし」

「これモデル?」

「いや、普通のOL。兄貴の秘書なんだと」

「これ放っておいたらダメだろ」

だよな。
俺も急に写真送られてきた時、よっぽど帰国したくなった。

危うく演奏にも出るところだったわ。
危ねぇ。

付き合ってたらお仕置き案件だぞこれは。

でも無邪気に笑う翠を見て結局は何も言えないんだろうな俺は。

そんな事を思いながらフッと笑って目を閉じた。
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