天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
"わざわざありがとうね"

そして今日も時間通りに終わってビルから出ると、少し離れたところに律の車を発見する。

律も気付いたのか、車から下りた。
私は駆け足で近づく。

「おつかれ」

「お疲れ様。迎えありがとう」

「ん。乗って」

そう言って助手席を開けてくれる。

「公演おつかれ様!」

「ああ。ありがとな」

律はフッと笑うと、車を出した。

「なんか久しぶりだね」

「ははは。そうだな」

「ちゃんと休んだ?」

「ああ。寝てたよ。翠と選んだあの枕最高よ」

「ふふふ。タオルよりは良いだろうね」

「キャンプしてたんだよ」

「ははは!」

律って本当面白い。

「家具もやっと揃ったし」

「言ってたもんね! 見たい!」

あ…
軽々しくそんな事…

「ククククっ。見るか?」

「いいの?」
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