天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい


「なんでだめ?」

「いや…」

「俺に襲われる?」

「んな!? 律!」

「ははは。大丈夫、何もしないよ」

しないんだ…
あかん!
何をガッカリしてんのよ!
信じらんない!

「たぶんな」

「たぶっ!」

「なぁ。動揺しすぎ」

なんて言って笑っている。

「動揺なんてしておりません」

私はスンとする。

「んで、行くの? 行かないの?」

「い、行きますん」

「フッは、どっちだよ」

「…行く。見たい」

「ん」

そしてマンションについて、いよいよ中に入る。

「なんかいい匂いする」

「ビーフシチュー作った」

「え? 料理できんの?」

「俺出来ないなんて言ってないだろ」

「意外すぎる」

「食うか?」

「いいの? 食べたい!」

「んじゃ座って待ってて」

「ありがとう」

そして部屋をグルッと見渡す。
ふふふ、ちゃんと家具が置かれてやっと部屋っぽくなってる。

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