天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
物語を見ているようなそんな感覚で、一つとして無駄な音符はなくて丁寧で優しく慰めるようなそんな音色を奏でたかと思えば、情景が変わり嵐の中にでも立っているかのような激しさがあったりと、全く暇な時間など与えてくれなかった。
初めて聴いたにも関わらずすっかり彼の演奏の世界に引き込まれる。
そっとまた目を開けて彼を見る。
黒い髪は立ち上げるようにゆるいウェーブヘアにセットされた髪型でその横顔はとても美しかった。
ピアニストなのに、鍛えているのか燕尾服を着ていても分かるその逞しい身体つきに男性らしさを感じた。
彼の奏でる音の世界へといざなわれるようにまた目を閉じて、その音色を全身で受け止める。