天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい


「なぁ。そんな飲んで大丈夫? そろそろタクシー呼ぼうか?」

「なんでよ」

「いやお前、ヘロヘロじゃん」

「なんでよ」

「クククク、酒強いんじゃなかったのか?」

「なんでよ。なんで…なんで何もしてこないのよ」

私…律の事、好き…なんだ。
律はどうなのよ。
私だけ?

なんで優しくするの?
律の気持ちを確かめたい。

律を睨む。

「襲うぞなんて口ばっかりじゃない! 意気地なし! 私ばっかりドキドキして! 律なんか…」

とはいえ私も私で素直になれず勢い任せに律に変な事を言ってしまう。
その時、持っていたビールを取り上げられたかと思えばドサっとソファに押し倒される。

「俺なんか? なに?」

律は私の両手をソファに縫い付けて真っ直ぐに見下ろす。

「り、律なんか…」

「嫌い?」

そう言って妖艶に微笑んだ。
なんて顔するの。

私を熱い瞳で見つめたまま唇をキスで塞がれる。

ついばむように何度も。
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