天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい

そして僅かに開いた口の隙間から熱い舌が侵入してきて、私の舌を捕まえゆっくりと縦横無尽に動き出す。

こんなキス知らない…
なに?
なんでこんなキスをするの?

「はぁっ…」

つい吐息が私の口から溢れる。
すると下唇を吸い付かれ律が唇をそっと離した。

「俺は好きだよ。翠が」

本当に?
優しかったけどそんな素ぶりこれまでなかったよね?

「どうだか」

「それじゃ教えてやる」

そう言って私を横抱きに抱えると寝室へと運ばれる。

二人で選んだシーツがかけられたベッドに下ろされ、すかさず覆い被さる律。

私を見下ろす律の顔は、これまで見てきた律とはまた違う、妖艶で艶めかしく見つめられるだけで息を飲むほど麗しく見えた。

本当に私の事好きなの…?

思わず自然と手がその頬に伸びる。

律はその手をそっと取ると私を見下ろしたままキスをする。
指を咥えて甘くかじられ、指の間に舌が這う。

「っふ…」

恥ずかしいのに目が離せない。
捕えられてしまったかのように見つめ返す事しかできなくなる。
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