天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
こんなのは経験した事がない。

私を抱きしめたまま動かない律の余韻に浸りながら律を抱きしめる。

こんなにこの行為で愛を感じるなんて。
唇が千切れるほどキスをして。

二人の乱れた呼吸が行為の激しさを物語っているようだ。
激情の波に乗って、律の温もりに包まれて。

ずっとドキドキしっぱなしだった。

まるで身体と身体で会話するように。
好きだよと私に本当に伝えてくれてるみたいだった。

「翠、大丈夫か?」

律が私の首にうずめていた顔をそっと上げる。

「大丈夫。泊まる今日」

幸せ過ぎた。

「はは。ああ、そうしな。朝送るから」

そう言って律はチュッと何度もついばむようなキスをする。

「うん。もうこのまま寝たい」

急にスイッチが切れたのか体力の限界を迎えたのか急激な睡魔に襲われる。

「ククっそうだな。疲れたろ、おやすみ翠」

「うん。こんな風になった事ない。おやすみ律」

そう言って目を閉じたままかろうじて答えると律はクスッと笑ってオデコにキスを落とした。

「こんなのまだまだだけどな」

そんな声が聞こえた気がしたが私はそこで意識を手放した。
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