天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい


そしてようやくメイクも終わってマンションに一度寄って着替えを済ませ、会社まで送ってもらう。

いつの間にか、サンドイッチも用意してくれて持たされた。

「はい。いってらっしゃい」

「ありがと。行ってきます」

そっと律が手を頭の後ろに伸ばして引き寄せるとキスをされる。

「リップ塗り直してな」

そう言って自分の口を指でそっと拭いてみせた。

「ふふっ、行ってきます」

「ん。行ってらっしゃい」

車から下りると、律は片手をヒラっとあげてフッと笑顔を見せると車を発進させた。

カッコよ。
私も気持ちを切り替え会社のビルへと足を向けたのだった。


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