天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「それじゃ俺も行くわ。お疲れ様」

「待って!」

真弓に引き止められる。
なんだ?
俺は特に何も言わずに顔だけ振り向く。

「あ、あの…」

「なにかあったのか?」

珍しくしどろもどろしている真弓。

「私、好きなの…」

ん?

「何を?」

「……律を」

え?
俺を?
なんで今更?

「どうした急に」

今日も調子悪そうだったし。

「急じゃない…。ずっと好きだった。本当は律が日本に行くって決める前に言いたかったのに、言えなくて…」

俺は黙ったまま話を聞く。

「律が行ってからずっと寂しくて。やっぱりどうしてもこの気持ちを抑えられなくて。……好きなの」

そう言って俺を見上げる。

真弓…
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